歩行者優先はマナーではなくルール

 私が最近気になるのは、信号機のない横断歩道で渡ろうとする歩行者がいても、止まらない車が実に多いことだ。私の実感では、止まる車はせいぜい1割程度だ。印象的には、一番止まらないのが女性と高齢者ドライバーだ。

 道路交通法第38条1項には、「横断歩道等における歩行者等の優先」という規定がなされている。守らなければ、「横断歩行者妨害」ということで反則金などの罰則もある。私も実はあまりよく知らなかった。

 なぜこの規定に注目したかと言えば、埼玉県川越市に居住する私が利用する路線バス(東武バス)は、信号のない横断歩道に人が立っていると100%止まって、歩行者の横断を優先させているからだ。このことを東京でタクシー運転手をしている知り合いに話すと「東京では、タクシーが横断歩道で止まらなかったら一発で笛を吹かれて反則金を取られる」と話していた。私の推測だが、営業車にはより厳しく運用されているのかもしれない。

 JAF(日本自動車連盟)が昨年(2019年)の8月から9月にかけて行った調査によると、全国平均では、歩行者優先で止まった車はわずか8.6%という結果が出ている。この調査は、各都道府県で2カ所を選択し、JAFの職員が現場に行って調査したものである。この調査で断トツに停車率が高いのが長野県で、58.6%になっている。調査開始以来、3年連続でトップだそうだ。断トツに悪いのが栃木県の0.9%だ。東京も2.1%と悪い。

 欧米では死者の多くが車同士の事故によるもので、歩行中や自転車走行中の死者は全体の2~3割程度だそうだ。だが、日本では約5割にのぼっている。欧米に比べて歩行者の優先度が低いということだ。東京五輪でいま以上に多くの外国人が日本を訪れる。交通ルールでも恥ずかしくない日本にしたいものだ。