「半導体は、PC、携帯電話、インターネットなどの一般汎用技術を支える基幹部品になった。早い話が、半導体はネジ・クギになった」という記事を以前書いた。東日本を襲った巨大地震と津波は、ネジ・クギと化した半導体にどのような影響をもたらすだろうか?

計画停電で製造装置を動かせない

 新聞報道によれば、岩手県にある東芝エレクトロニクス、富士通セミコンダクター、茨城県のルネサス エレクトロニクス、日本テキサス・インスツルメンツなどが、工場建屋に亀裂が入るなど直接被災した。この記事を書いている時点では、復旧の目途は立っていない模様である。

 また、福島第一原発に大事故が発生し、首都圏は深刻な電力不足に陥った。その結果、東京電力による(まったく「計画的」とは思えない)計画停電が実施されている。どの企業が計画停電に巻き込まれているか詳細は分からないが、直接的震災よりもこの計画停電の方が、半導体メーカーにとっては問題だ。

 半導体工場には数百台規模の製造装置が設置されているが、その多くが精密機械や真空装置である。たった3時間の計画停電でも、停電前には危険なガスや薬液処理が必要であり、停電後には数百台の装置全てについてデリケートな性能チェックを必要とする。

 装置によっては、立ち上げに数日もの時間を要するものもある。したがって、計画停電のエリアに入っている半導体メーカーは、たとえ震災の影響が軽微であったとしても、計画停電が続く限り、生産はできないだろう。

 また、言うまでもなく、半導体チップは携帯電話、パソコン、デジタル家電、およびクルマなどの基幹部品である。これらの製品に日本製の半導体チップを使用している場合、その生産が滞ることになる。

 その一例として、遠く離れた米国の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)が、米ルイジアナ州の工場を停止した。日本からの部品調達が困難になったからである。