私は、何を隠そう原子核工学の出身である。修士課程の2年間、大阪の熊取町にある京都大学原子炉実験所で研究を行った。ちょうどチェルノブイリの原発事故が起きた頃だ。

 大学卒業後、日立製作所に就職し、半導体技術者に転身した。それから25年も経ってしまったが、少なくとも原子炉がどのようなもので、現場がどのような環境であり、そこで行われる作業がどのくらい危険なものかは理解しているつもりだ。

 本稿では、原子核工学出身の半導体技術者として、今回の福島原発事故に対する意見を述べたい。

作業者を見殺しにするな

 福島第一原発では、極めて過酷な環境下で数百人の作業者が事故対策に当たっている。3月28日、保安検査官事務所の横田一磨氏の報告によれば、作業者の食事は1日2回(ビスケットとアルファ米だけ)、夜は毛布1枚で雑魚寝であるという。また、4月1日の報道によれば、放射線の被曝量を測定する線量計はグループで1~2個しかなかったという(なぜ横田氏はこのことに気が付かなかったのか)。

福島第1原発で東電社員2人の死亡を確認

東京電力福島第一原子力発電所の4号機(左)と3号機(右、3月24日撮影)。4月3日、東電社員2人の死亡が確認された。〔AFPBB News

 福島原発が収束できるか、半径30キロメートルの避難民がどうなるか、首都圏を含む近隣地域はどうなるか、果ては日本の未来はどうなるか、その命運は上記作業者の双肩にかかっている。であるにもかかわらず、この劣悪な処遇は一体どうしたことなのか。これではまるで、補給路を断たれた兵士ではないか。片道燃料だけ積んで飛び立つ神風特攻隊を髣髴させる。

 もはや事態が長期化することが確実となった。作業者の安全を確保し、能力を十二分に発揮できるように、早急に後方支援を充実させるべきである。何より、十分な食料と水の継続的な補給だ。また、専門の食事係と医療班を常設すべきだ。さらに、就寝用にマット、枕、布団を準備してもらいたい。場合によっては、放射線遮蔽した仮設住宅の設置を行う必要がある。

技術と設備の進歩スピードが遅い原発

 なぜ、このような簡単なことが、東京電力は瞬時に対応できないのか。半導体の常識からすると考えられない対応の鈍さなのだ。