消費者の意識を変えて食品ロスを削減する方法とは?

(篠原 信:農業研究者)

 スーパーへ買い物に行くと、冷蔵棚の奥の方から牛乳を取り出している人をよく見かける。牛乳の製造日をよく見ると、手前に古いものが陳列されている。一番新しい日付の牛乳は、一番奥に置かれている。

 お店は「古いものを高く買ってほしい」、お客さんは「同じ値段なら新しいものを買いたい」。その攻防の中、奥の方から取り出そうとするお客さんが現れるのは当然だといえる。むしろ、古いものをいつまでも同じ値段で売ろうとするスーパーの方が、ちょっといじましい気がする。

 そんな中、私は次のように思った。「1日経つごとに5円安くなることが分かっていたら、製造日が2日前でもそっちの方を買うのになあ」。

「少し古くても安いものを」に変える仕組み

 食品ロス削減推進法が5月24日、成立した。ずいぶん前から問題視されている、食品ロスをできる限り削減することを促すことを、国も真剣に考え出したということだ。

 消費者庁によると、食品廃棄物は年間2759万トンに上る。このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は643万トンに上るという(2016年度推計)*1。飢餓に苦しむ人たちに向けて行われている食糧援助の1.7倍の量というのだから、こんな「もったいない」ことは、できる限り減らしたいものだ。

 だが、現在の販売慣行だと、どうしても食品ロスが発生しやすいように思う。何しろ、古いものも新しいものも同じ値段で売られているからだ。