さらに付け加えるならば、閣僚クラスの顔ぶれも、文在寅氏のお気に入りで固めています。ハノイでの米朝会談決裂後、韓国では閣僚人事が行われました。そこで7人も入れ替えがあったのですが、外交・安保の要である外交部長官の康京和、国家安保室長の鄭義溶というお気に入りの2人は留任しました。2人はアメリカと意思疎通が十分取れていなかった、と言われていますけどね。

韓国外相「終戦宣言と核施設廃棄を交換条件に」 北への核申告要求は先送り提案

今年3月、大規模な閣僚人事が行われる中、留任した韓国の康京和外相(2018年9月11日撮影)。(c)AFP PHOTO / YE AUNG THU〔AFPBB News

 逆にこの閣僚人事で代えられたのが統一部長官の趙明均。彼はずっと南北関係をやってきた人で、北朝鮮、それからアメリカがいまどう考えているのかを冷静に見てきた人でした。後任は、ずっと「南北の経済交流を進めるべきだ」と言ってきた金錬鐵です。

 また、2カ月も空いていた中国大使のポストに就いたのは、少し前まで青瓦台の政策室長として、経済政策を取り仕切ってきた張夏成です。彼は、所得主導成長政策の大失敗で更迭された人物で、外交安保の経験は全くありません。そんな人をわざわざ中国大使に充てたわけです。もう情実人事としか言いようがありません。

 こうした構造改革や情実人事の結果、今の韓国は危機対応力が全くなくなってしまいました。しかもフレキシビリティも失われてしまった。何より問題は行政府の人々がやる気をなくしていることです。うまくいけば支持活動家が手柄を横取りする、失敗すれば責任をなすりつける。こういう政権になってしまったのです。

 専門性もありません。状況をきちんと分析できていません。だから米朝首脳会談の決裂を受けても、文在寅氏は「北朝鮮が寧辺の核施設を破棄するなら非核化に向けて不可逆的な段階だ」、「開城工業団地と金剛山観光を再開しないといけない」なんて発言しています。

 この発言にはさすがのアメリカも呆れかえっているわけです。なにしろ、対北朝鮮政策については、韓国がずっとミスリードしてきたわけです。「北朝鮮は非核化を実施する」と言っている、なんてアメリカに伝えておいていたのに、あの結果です。

 それで米朝会談が物別れに終わってしまい、「きちんと制裁を維持していくことが北朝鮮を変えさせる道だ」とアメリカ側が改めて明言しているときに、しきりに南北の経済交流を訴えている。アメリカが呆れ返るのも当然です。

文在寅氏が夢見る「南北連邦制」

田原 果たして文在寅さんは、北朝鮮に非核化を求めているんですか、求めていないんですか。

武藤 おそらく、「非核化よりも大事なことがある」と思っているんじゃないですか。

田原 南北統一ですか?

武藤 統一とまでは行かなくても、連邦制を基にした連合国家として仲良くするということだと思います。もうひとつは、朝鮮半島で戦争が起きないようにすることを重要視しています。ただ、非核化についてはいつも優柔不断なことを言っていますね。

田原 お互いに仲良くなれば、別に北朝鮮が非核化しなくてもいいという考え方なのかな。

武藤 それくらいのことを思っているのかも知れません。

田原 文在寅さんはしきりに日本にケンカを売っていますが、それで最終的には何を狙っているんですか。

武藤 私は、文在寅氏は日本にケンカを売っているつもりはないと思います。

田原 だけど、彼のこれまでの言動は明らかにケンカを売っているじゃないですか。

全てにおいて「俺が正しくて、お前が間違っている」の発想

武藤 文在寅氏は今年年頭の記者会見で、「日本はもっと謙虚になるべき」と言ったじゃないですか。

田原 言っていました。

武藤 「謙虚になれ」ってどういうことかと考えると、要するに「謙虚になって全て俺の言うことを聞け」ということでしょう。

 彼が言う「歴史の見直し」だって同じことですよ。全て自分が正しい、自分に正義がある、周りのやつらが間違っている、と考えている。だから日本に対しても、「俺たちが考えている歴史認識が正しい、お前たちの認識は間違っている、だから俺たちの言うことを聞け」ということですよ。だから慰安婦問題でも徴用工問題でも、あんな好き勝手なことが出来るんです。

田原 ということは、これから日韓が融和の方向に向かうことは・・・。

武藤 ないと思います。文在寅氏は「自分に正義がある」と信じ込んでいますから。

田原 日本とケンカしても、韓国には何のメリットもないのにね。

武藤 その通りです。だけど、情実人事で危機管理能力が失われた政権だから、日韓関係改善については優柔不断な態度を取り続けたまま、何の動かないという結果になるのではないでしょうか。