マット安川 世界を覆う民主化の波は、中国にどういう影響を与えるのか・・・。ウィキリークスに関する書籍を日本で一番早く上梓した宮崎正弘さんを迎え、現状の報告と分析をいただきました。

 独自の中東、中国コネクションからの情報がウィキリークスの情報と照合され、絡み合って展開していく放送は、とても時間が足りない内容となりました。

ウィキリークスなどネット革命が世の中を変え始めた

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。最新刊は『オレ様国家 中国の常識』『ウィキリークスでここまで分かった世界の裏情勢』。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 今回の中東の一連の騒ぎは、ウィキリークスから始まったと言えます。ウィキリークスが暴露した機密文書の中に、アメリカがばらされては困るニュースが山のようにありました。

 その中にエジプトやチュニジア、リビアなどのことも入っていた。エジプトのムバラク(前大統領)は一族で富を独占して腐敗が激しく、チュニジアも同じだが、アメリカとしてはニコニコ笑って当面は仲良くせざるを得ないと。

 なぜなら、政府がひっくり返ってイスラム原理主義過激派が政権を取ったらアメリカの国益が脅かされるからです。完全に二律背反なんです。そうした内容のことが機密文書に入っていた。

 このような状況で、チュニジアなどでは国民が長い間独裁体制に不満を持ちつつも表に出せなかったけれど、ツイッターやフェイスブックといった新技術が入ってきて、人々が連絡を取り合いデモを始めたわけです。

 つまりウィキリークスに代表されるネット上の革命が従来の情報空間をブチ破り、世の中を変え始めたのです。

民主化という理想主義は大きな危険性をはらんでいる

 民主化というのは理想的であり正しい選択ですが、欧米や日本における民主主義と、いま中東で起きている民主化はまったく次元が違います。まず議会がないし、女性の参政権がない。基本的なところで西側と100年くらいの差がある。

 そんな民主主義が未熟な国にいきなり理想を持ち込むのはかなり危険です。レバノンがいい例です。そうやって投票をやり、選ばれたのがイスラム原理主義過激派のヒズボラです。ですから、あまり干渉しない方がいい。その国自らが努力してやるべきことです。