後を引く美味! シンガポールの“魚の頭”カレー

世界に広がる「フィッシュヘッド」の食文化

2019.04.05(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要
シンガポールの「フィッシュヘッドカレー」。カレースープの中に見えるのは魚の頭。(筆者撮影、以下同様)

 魚好きなら「魚の頭」のおいしさをよく知っているだろう。そんな魚好きにおすすめなのが、シンガポールの「フィッシュヘッドカレー」だ。世界にもいろいろな魚の食べ方があるものである。

捨てられていた魚の頭をカレーに使う

 シンガポールのリトルインディア。インド系住民が多く暮らすこの地域は、エキゾチックでカラフルな建物が立ち並び、スパイスの香りが漂う。その一角にあるレストランの有名な料理が、フィッシュヘッドカレーだ。テーブルに鍋ごと運ばれたその料理は、赤いインドカレーの中に魚の頭が浮いているというもの。

 魚の目玉と自分の目が合うと、一瞬たじろぎそうになる。だが、日本にも、鯛のかぶと煮のような料理がある。臆することなく、魚の頭をほぐして、カレーと混ぜ、ご飯にかける。口にすると、魚の旨味にカレーのスパイスが混ざり合って後を引くおいしさだ。店には地元インド人のほか、観光客も多く訪れ、みな魚の頭をほじっている。こんな魚の食べ方もあるのだと感心する一方、インドでも魚の頭を食べるのだろうかと不思議に思った。

 インド料理では魚の頭は使わないが、インド系の住民が、たくさん捨てられていた魚の頭を使ってカレーを作ったのがフィッシュヘッドカレーの始まりらしい。そのカレーは魚の頭を珍重する中国系の住民に喜ばれて人気になり、シンガポールの名物料理になった。中国系、マレー系、インド系の住民から構成される多民族国家のシンガポールならではの料理である。

 いまでは、中華風、マレー風、プラナカン風などいろいろなスタイルのフィッシュヘッドカレーへと発展した。「プラナカン」とは、中国やインドからマレー半島にやってきた人々とそこに住むマレー人との間に生まれた子供や子孫のこと。彼らの伝統料理はプラナカン料理という(ニョニャ料理とも)。

 フィッシュヘッドカレーはシンガポールの隣の国、マレーシアやさらにはブルネイにも広がり、クアラルンプールあたりのプラナカン料理レストランで食べることができる。マレーシアや中国の調理法やインドやタイなどのスパイスを取り入れていて、インド風と異なる味わいのフィッシュヘッドカレーを楽しめる。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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