(野崎大輔:組織人材開発コンサルタント)
この4月から、昨年成立した働き方改革関連法の適用が始まります。
企業に義務付けられる内容を簡単に言えば、「労働時間の削減」、「5日間の有給休暇の消化」、「同一労働同一賃金」などです。
これらを中小企業の経営者はどう受け止めているか。多くの中小企業と付き合っている経験から言えば、ほとんどの経営者の本音は「そんなの関係ねえ」です。そもそも中小企業は、絶対的な人手不足という状況にあります。もし業績が上がっているような会社であれば、なおさら人手が足りていないので、社員に休んでもらってはいっそう困る。つまり、中小企業は人手が足りないので働き方改革に手を付ける余裕はない。それが現実です。
「働き方改革」で自宅に仕事を持ち込む社員が続出?
だから経営者は、社員の労働時間を削減する前に、「全然採用ができない現状をどうしようか」で頭がいっぱいです。働き方改革をニュースなどで取り上げていることは知っていても、自分の会社で実施しようなんて、ほとんど考えていません。
もちろん大企業は違います。働き方改革を進めなかったら、社員から「うちの会社のコンプライアンスはどうなっているんだ」などと不平が出ます。だから大企業はやるのです。従業員の数も多く、経営的な体力もあるのでさまざまな対応が可能です。でも中小企業は同じようにはできません。なにしろ社員がいないのですから。
監督する労働基準監督署だって、いちいち中小企業を個別にチェックすることはできません。「ウチの会社、ものすごい違反がある」などと社員からの通報でもあれば調査に来るでしょうが、そうでもなければ「有給休暇を5日間消化させているかどうか」なんて分かりません。
そもそも社長の視点で見れば、休んでいる日にも給料を支払う有給休暇は「コスト」でしかありません。もちろん、社長の意識も変わってきているので、「休みを取らせよう」という風潮は以前に比べればだいぶ出てきてはいますが、「有給休暇100%消化」というところまではまだいっていません。私が関わっている企業の経営者にも、「世の流れも変わってきていますから、できる範囲で、なるべく休みを取れるようにしてきましょう」という現実的な対応をしているのが実態です。