(文:大西康之)
東芝が溶解していく。
フラッシュメモリー事業を「産業革新機構」(INCJ)、米「ベインキャピタル」、韓国の「SKハイニックス」という日米韓連合に売却したことで、2018年度の連結売上高は3兆6200億円にまで減る見通しだ。ピーク時の7兆6681億円(2007年度)の、実に半分以下である。
筆者は2017年、『東芝解体 電機メーカーが消える日』(講談社現代新書)を書いたが、まさにタイトル通り「解体」が進んでいる。今のペースで溶け続けると、あと10年で東芝は間違いなく消滅する。
どんどんなくなる「東芝の指定席」
JR山手線の浜松町駅。改札を抜けて右に曲がると羽田空港行きモノレールの改札があり、直進して左に曲がると東芝本社ビルにつながる長い屋根付きの通路がある。改札を出てすぐの広場には、コンビニエンスストアと数軒の飲食店がある。
「東芝のホーム」である広場の柱は、筆者が知る限り30年以上、東芝の指定席だった。昔はエアコンなどの白物家電、10年前は福山雅治を起用した液晶テレビ「レグザ」や、ノートパソコン「ダイナブック」の広告が躍っていた。白物家電やデジタル機器が振るわなくなってからは、有村架純を使ったフラッシュメモリーの広告になった。
その指定席が、東京の土産菓子として人気の「東京ばな奈」の黄色い広告に変わった。衝撃的である。
昨年5月には、ニューヨークのランドマーク・タイムズスクエアにあった、赤地に白文字の「TOSHIBA」のLED看板が撤去された。売上高が最高を記録した2007年に設置されたこの看板は、年末年始のカウントダウンで「世界10億人が観る」と言われた。
さらに昨年3月には、1969年以来続けてきたテレビアニメ『サザエさん』のスポンサーも降板した。
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