古代ローマ遺跡、コロッセオ。『戦火のかなた』にも登場する

 昨年11月他界したベルナルド・ベルトルッチ監督の様々な作品を、これまで4回にわたってみてきた。

 今回も、前回、前々回に続き、その故郷、北イタリア、エミリア・ロマーニャでの自身の階級社会の記憶とも言える長編『1900年』(1976)で、イタリアの「過去」を感じていきたいと思う。

(この3回でイタリアの20世紀前半を概観することになる)

 とは言え、3世代にわたる長い時の物語だけに、大戦の時代の描写は少ない。それだけ、一つのシークエンスに多くの要素が凝縮されているわけである。

 今回は、第2次世界大戦中の銃後のイタリアを描いたジュゼッペ・トルナトーレ監督の『マレーナ』(2000)をもう一つの軸として、多くのイタリア人監督の助けを借りながら、イタリアの第2次世界大戦を追っていきたいと思う。

 『マレーナ』は、トルナトーレの故郷シチリアが舞台。

 前回紹介したフェデリコ・フェリーニ監督の『アマルコルド』(1973)同様、「下品」と言われそうな直接的性欲表現も交え、思春期の少年の憧れの女性への視線を通し、大戦下のイタリアを映し出している。

 映画はラジオでのベニート・ムッソリーニの宣戦布告演説から始まる。

「陸 海 空で戦う勇者よ 黒シャツのファシスト党員よ イタリア国民よ イタリア領の人々よ 機は熟した」

町民たちは熱狂し 拍手の轟音が広場を包む 

同じ日、初めてマレーナの姿に魅了された12歳の少年レナートは、ストーカーまがいの行為と妄想を繰り返しながら性的欲望を隠さぬ男と魅力に嫉妬する女の煩悩まみれの生々しい姿を目撃していくことになる・・・