捕鯨論争を巡る「賛成の正義」と「反対の正義」

『おクジラさま』から「理解」のための学びを得る

2019.01.18(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
ミンククジラのブロック。商業捕鯨が再開されれば、鯨肉と接する機会が増えるかもしれない。

 2018年12月、日本政府が国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を表明した。このまま行けば、今年(2019年)7月から33年ぶりに商業捕鯨が再開されることになる。今後も国際論争を含む大きな動きが起きるのは必至だ。私たちにとっては、お店で鯨肉を目にする機会が増えるだろう。

 捕鯨反対派の「捕鯨は残酷」主張と、日本の賛成派の「捕鯨は伝統」という主張は噛み合わないままだ。ずれた論争の背景には何があるのか。理解のための糸口はあるのか。『おクジラさま』から学びを得たい。

主張のズレに伝統・変化への根本的な違い

2017年8月に刊行された佐々木芽生著『おクジラさま ふたつの正義の物語』。

おクジラさま』は、ドキュメンタリー映画監督・著述家の佐々木芽生氏が手がけた映画と本だ。イルカ追い込み漁が営まれる和歌山県太地町で、地元住民、環境活動家、外国人ジャーナリストなどを取材し、それぞれの立場や主張を描く。「両方の意見をバランスよく伝えたい」と、捕鯨賛成側と反対側の双方の主張に耳を傾けている。2017年に映画が公開され、また本も出版された。映画はいまも各地で上映会が行われており、本はもちろん書店などで入手できる。

 捕鯨を巡る衝突には主張のズレがある。賛成派は捕鯨には「伝統」があると主張する。一方、反対派は、捕鯨は「残酷」であると主張する。

 このズレの背景にあるものを、著者は本の中で、取材中「気づいた」こととして示す。日本人は、伝統はできるだけ原型をとどめて後世に伝えることが重要と考えるのに対し、欧米人は古くて時代に合わなくなったものは壊すべきと考える。常に「文明化」や「進化」を求めてきた欧米人は、差別撤廃の視線を人間以外の生きものにも向け、苦痛を感じる生きものは人間と同じ配慮をすべきというところまで達したというわけだ。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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