最近、輸入車の試乗(もろずみ流に言えば「味見」)が続いている。とりわけこの時期、日本自動車輸入組合(JAIA)が主催する各社合同の試乗会が行われ、100台ほども並べられた車たちの中から、十数台を次々に味見する、という体験をする1日が恒例になっている。
こうした初見の試乗は人との出会い、その初対面の瞬間とよく似ている。相手が人間であれば、目を合わせ、いくつかの言葉を交わす。握手すれば手の感触から筋肉の太さまでが感じ取れる。そうする中から人となりが伝わり、第一印象が形づくられる。
それと同じようなやりとりを、クルマという個性豊かなプロダクツとの間で交わしてみる。すると「移動空間としての基本的な資質はどんなものか」に始まって、その奥にある、生み出した人々の思いの深さや強さまでが伝わってくることまである。
もちろんある程度の数のクルマたちとの付き合いを体験していなければ、そこに大づかみな全体像を描くのは難しいのだが、最近の私にとって、クルマに対するこの「初対面のご挨拶」は、10分も走らせればまず基本的なところは理解できたかな、というところまではゆくのである。別の比喩をするなら「利き酒」ともよく似ている。
そうやって味わった個々のクルマの印象についてはさておくとして、ここでは欧米の自動車メーカーのクルマづくりが向かっている方向や、その背景にあるはずの組織の雰囲気などに関する印象について整理しておくことにしよう。
自動車メーカーの現況はクルマの「動質」に表れる
これまでにも何度か指摘してきたように、特に自動車という消費財においては、ある時点で目に見える販売台数や損益などの数字の変移は、数年かそれ以上も前に動き出していた企業経営と、そこから生み出された製品が市場に投入されてから、さらに年単位の時間差を持って表れるものでしかない。