福岡に本社を構える「ふくや」。その特徴ある人事制度は、長い年月の取り組みを経て、いまや文化へとなっている。

 日本中で人手不足が叫ばれる中、女性社員が活躍し、安心して長く働けるような取り組みは、大企業にとっても中小企業にとっても重要な課題だ。多くの企業が、それぞれの特色や文化を踏まえたさまざまな施策に取り組んでいる。

 だが、その打ち出した制度は、1年後、5年後、10年後にはどうなっているだろうか。朝令暮改のような行き当たりばったりの改革では、社員が安心して働き続けるのは難しい。では、どうすれば働き方の制度改革を一過性のものにせず定着させていくことができるのか。

 そのような長いスパンでの取り組みを考える上で、大いに参考になる会社がある。福岡は博多の中州に本社を構え、明太子の製造や販売を主軸に営む「ふくや」だ。かつて女性社員の離職の多さに悩み、その状況を打開するために始めた取り組みがすっかり定着し、今やふくやならではの「文化」になった。

 ふくやが導入した施策とは。その施策はなぜ定着させられたのか。ふくや支援部人事課課長の中山徹也(なかやま・てつや)氏に聞いた。

カギは綿密なケアと意識の醸成

ふくや支援部人事課課長の中山徹也(なかやま・てつや)氏。

 中山氏によると、今でこそ安定した採用を行えているが、かつては社員の確保や定着に苦労したという。特にバブル期は、男子学生は東京での就職を目指す向きが強く、地元企業のふくやには応募があまり無かったという。そのような事情から、ふくやには女子学生の応募が多く、従業員も女性の割合が増えていった。現在でも、パートやアルバイトを含めると7:3で女性が多くなる。

 しかし、女性社員が戦力の中心となると、問題となるのは結婚や出産を契機とした離職だ。ベテランの域に達した社員が抜けてしまうと、事業が回らなくなってしまう。これは何とかしなければと、経営層は危機感を覚えた。

 そこでふくやは、女性社員の定着を目的に、働き方の制度を見直し、いくつかの取り組みを始めた。