まず、ふくやは出産から復帰する女性社員が働きやすいように、「6通りの働き方」を定めた。2000(平成12)年頃のことだ。

 これは、勤務時間に関して「残業可能」「残業不可」「時短勤務」の3通りの選択肢と、土日の出勤が「可能」か「不可」かの2通りを組み合わせて、6通りとなるものだ。本人の希望や、家族の支援状況に合わせて、働く時間と曜日を選ぶことができる制度だ。

 実際の運用としては、まず、妊娠が分かった女性社員が人事課に報告するとともに、そこで綿密なヒアリングを行う。そこでは、家庭の状況、ご両親の所在や関係性、支援をしてもらえるのかなど、立ち入ったことも聞くという。

 また、出産後、職場への復帰の目処が立った時点で、改めてヒアリングを行う。実際に子育てをしてみて、仕事と両立できそうか、保育園をどう考えているかから、子育ての不安や悩みまで、幅広く聞いていく。

 それによって、復帰の日程とあわせて6通りの働き方のどれを選ぶか、そして復帰する際の部署を調整することになる。元の部署に戻るのが理想だが、勤務時間などの関係から、それでは復帰できないこともある。また、会社としても、部署が変わったとしても社内での経験やノウハウは生きるので、新しく外から採用するより仕事はしやすいという。

 この取り組みの効果として、中山氏は女性社員が働く上での不安が減ったと説明する。

「普通なら、出産してちゃんと仕事に復帰できるのか、仕事と育児を両立できるのかという不安が出てくるのでしょうが、こういう制度があって、同じような働き方をしている先輩がたくさんいるので、自分も子どもを産んで、あのように復帰して働いていくんだろうなとイメージでき、そのような不安が軽減される部分はあると思います」

 勤務時間による待遇の違いは、時短分の控除や残業手当の有無などがあるが、土日の出勤の有無については待遇に差はない。それでも、土日もそのために新たに人を増やすということはせず、それ以外の人で回しているという。