すなわち、北朝鮮や中国から在日米軍基地、グアムやハワイの米軍施設などに向けて発射される弾道ミサイルに備えて、横須賀を本拠地とする第7艦隊に所属するイージス巡洋艦やイージス駆逐艦は、弾道ミサイル防衛に対応する艦を中心に配備を進めてきた。

 現在、日本周辺海域に展開するアメリカ海軍艦艇にとっては、弾道ミサイル防衛任務が、最重要任務の1つと位置づけられている状態である。だが、中国海軍と対峙する最前線に配備している主力戦闘艦艇が、敵艦艇や敵航空機や敵地に対する攻撃能力を十分に身につけていない現状では、中国の接近阻止戦力との対決には心許ないと言わざるを得ない。

 もちろん、現在トランプ政権が主導して米海軍が取りかかっている「355隻艦隊」が完成した暁には、東アジア方面海域に展開させる米海軍戦力を大きく増強させることができ、弾道ミサイル対策に当たる艦艇に加えて、中国の接近阻止戦力を打ち破るための戦力を展開させることも可能になるかもしれない。しかし、そのような大艦隊が誕生するのはどんなに早くとも2035年以降になるというのが、アメリカの造艦能力の現状である。

 したがって、第7艦隊の艦艇を弾道ミサイル防衛任務から自由にして、それらの艦艇に「中国の接近阻止戦力に対抗するための強力な攻撃力と新たな任務」を付与するというのが、当面の間、アメリカ海軍にとって唯一可能な手段なのである。

米海軍が警戒を強める中国海軍の新鋭55型駆逐艦(出所:人民図片)

イージス・アショアは誰のためか

 しかしながら、これまで日本周辺海域でアメリカ海軍艦艇が担ってきた弾道ミサイル防衛態勢を廃止してしまうことは、在日米軍基地はともかく(在日米軍基地は、最悪の場合は引き払ってしまえば良い)グアムやハワイの防衛態勢上危険極まりない。