今回の件で感じるのは、桜田大臣のようにサイバーセキュリティを理解していない人が担当大臣になったことが、笑い話にもなってしまい、日本にとっていかにマイナスかが十分に認識されていないのではないかということだ。
既に述べた通り、世界に「日本のサイバー政策トップはパソコンを使うことすらできない」と知れ渡ったと書いたが、影響はそれだけではない。国境も関係なく攻撃が繰り広げられるサイバーセキュリティの世界では他国との協力も不可欠だ。そして日本はよくサイバー意識の高いイスラエルやエストニアといった国々と協力関係を築いていると世界に向けて喧伝している。だが今後、サイバーセキュリティを軽視し、知識もない大臣を任命する日本との協力は「大丈夫か?」と世界から言われかねない。また、全くの素人がサイバーセキュリティ担当大臣を務める日本は不幸であると、外国人たちが他人事として嘲笑していることは間違いない。
国際イベント目白押しの日本はハッカーの最大の標的になる
また国内に目を向けても、サイバーセキュリティはサイバー犯罪、経済問題、テロ、サイバー戦争などとつながっていく問題であり、専守防衛を国是とする日本では、どんなサイバー攻撃を受ければ個別的または集団的自衛権を行使できるのかなど憲法問題にもつながる重要課題である。今年末に改訂する防衛大綱でもサイバー防衛が注目されているにも関わらず、サイバーセキュリティ担当大臣がUSBが何かもよくわかっていないようでは笑えない。
特に日本では、これからG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)やラグビー・ワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会、大阪万博と世界的に目立つ国際的なイベントも続く。しかもこうしたイベントでは、過去のケースから見ても、国家系ハッカーたちの格好の標的になり、ハッカーらは早い段階から攻撃の準備を始めていることがわかっている。攻撃側よりも圧倒的に不利な防御サイドはかなりの準備が必要になり、すぐにでも議論を加速する必要がある。
にもかかわらず、担当大臣は、国会の答弁でニヤニヤと「スマホは極めて便利なので1日何回も使っている」と話し、ドヤ顔でスマホを見せている場合ではない。彼を担当大臣に選んだ安倍首相も、サイバーセキュリティの重要性をわかっていないのではと指摘されても仕方がない。
さすがに、日本のサイバーセキュリティの司令塔とも言われる内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のセンター長である防衛省出身の前田哲氏は、パソコンを触ったことがあるだろうし、他国の水準から見るとサイバーセキュリティに精通した人物に違いないはずだ。桜田大臣は、前田センター長というサイバーセキュリティの先生からしっかりとサイバーセキュリティについて教えてもらったほうがいいかもしれない。
とはいえ、やはりパソコンを触ったことのないサイバーセキュリティ担当大臣は歓迎されるべきではない。「今から勉強してください」と言えるような時間的猶予はないのだから。
海外の新聞社などによる報道の余韻が残っている今ならまだ、名誉回復のチャンスはある。サイバーセキュリティ担当大臣を今すぐに入れ替えるべきではないだろうか。