(姫田 小夏:ジャーナリスト)
「あれ、なんかおかしい・・・」
上海の街の異変に気づいたのは、地下鉄4号線から地上に出た直後だった。4号線は市の中心部を東西に横断する主要な地下鉄路線で、通勤に利用する人も多い。
午後7時、筆者は「上海体育場駅」で下車し、東に向かって歩いた。あたりは真っ暗で、すれ違う相手の顔ですら目を凝らさなければ見えないほどだった。
こんなに暗い街ではなかった
中国に住宅の流通市場が形成されて20余年が経った。この間、上海では右肩上がりで住宅価格が上昇した。近年では2015年後半に“狂乱の不動産相場”が到来し、ごく普通の住宅に“億ション級”の価格がつけられるようになった。その勢いは2016年になっても止まらなかった。「天井だ」と言われていた上海の住宅価格は、日本円で2億円や3億円という大台を突き抜けた。
上昇の一途をたどったのは住宅価格にとどまらない。日本とは比較にならない活発な消費活動に、日本からの訪問者は「景気はいいじゃないか」と口をそろえる。
確かに日本と比べれば上海はまだまだ活気がある。だが久しぶりに上海を訪れた筆者にとって、異様と感じられる変化があった。