鄧小平といえども、革命の元勲を無視することはできなかった。彼らが、鄧小平が登用した胡耀邦や趙紫陽を解任した。そんな歴史があるために、中国共産党ではOBが人事に対して大きな力を持っているという神話が作られてしまった。

 だが、現在、北戴河会議に集まるOBは白刃の下で革命戦争を戦った元勲ではない。そのほぼ全ては官僚OBである。そんなサラリーマンOBの中で、習近平を吊し上げることができるのは、総書記や首相を経験した江沢民、朱鎔基、李鵬、胡錦濤、温家宝の5人ぐらいだろう。

 しかし、江沢民はほとんどいわゆる“ボケ老人”であり、現時点では、北戴河に行ったかどうかも不明。李鵬も朱鎔基もこの秋に90歳になる。習近平を吊し上げる元気があるかどうか分からない。

 そして、この5人には共通点がある。それは、海外に逃亡した人々から一族の汚職を追及されていることである。彼らは現執行部である習近平の庇護がなくなれば、妻や息子や娘が逮捕されかねない状況にある。他の小物OBの状況も似たようなものである。多くは海外のネットで一族の汚職が話題なっている。そんな状況でOBが習近平を吊し上げることができるのだろうか。

 現在の北戴河会議は、OBが現役を叱りつける場ではなく、OBが自身と一族の身の安全を現執行部にお願いする場に変わっているとみてよいだろう。だから、この数年、習近平への権力の集中が進んだのだ。

習近平が追い込まれているのは事実

 ただ、火のないところに煙は立たない。多くの人々が、習近平の推し進める路線に不安を感じ始めたことは事実だろう。

 その不安の震源地は経済である。中国バブルは崩壊が言われながらいつまでも崩壊しなかったが、ここに来て多くの人が今度は本当に崩壊するのではないかと思うようになった。