「虎もハエも一緒に叩く」ことを大上段に掲げて始まった習近平の腐敗取り締まりキャンペーンは、現在までのところ、とどまることを知らない展開を見せている。

 中国で腐敗汚職に手を染めていない党官僚はほとんどいない。その現実のもとで、党官僚の浄化を徹底するとなれば、取り締まりは際限なく続くことになろう。

 だからといって、腐敗摘発を行わなければ中国はどうにもならないところまで来ていた。そのことは、2012年の第18回党大会から現在まで党中央紀律検査委員会(中紀委)によって摘発された腐敗幹部の顔ぶれを見れば一目瞭然である。

 香港の「大公報」紙のインターネットサイト「大公網」にある「国家反腐大業: 18大後落馬官員全解」を見ると、摘発された党官僚は67名に上り(7月24日現在)、そのうち副部(次官)級幹部が41名、正部(閣僚)級幹部が4名、副国(国家指導者)級が2名いる。これは江沢民や胡錦濤の時代にも見られなかった未曾有の摘発状況である。現在の中国が、かくも深刻な腐敗状況にあるかが分かる。

人民解放軍もターゲットに

 とはいえ、反腐敗を徹底的に追求すれば、党を筆頭に政府機関の権力機構は瓦解しかねない。そうならないようにする匙加減があるとすれば、これは実態として政治闘争となり、腐敗取り締まりは選択的に行われることになる。その際は、習近平政権が排除したい勢力に与していた党官僚がターゲットになるはずだ。

 ただし、摘発された顔ぶれを見ている限りは、特定のターゲットに絞り込まれているようには見えない。

 政府の腐敗行政官僚が摘発の中心であることは、先の67名中37と過半数を占めていることで分かるが、政府が牛耳る石油等エネルギー、電力、金融などの関連部門が腐敗の温床であったことを示すものであり、そこで利権を恣にした人物(例えば後述する周永康に連なる「石油派」など)が摘発の対象となったのは、政治的に選択されたというよりも、いわば当然の帰結であった。