こんにちは、人事戦略コンサルタントの松本利明です。PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社などで24年以上、人事と働き方の改革を行ってくる中で「おやっ!?」と思ってしまうことが実に多く発生してきました。

 実は、世間で言われる「セオリー」の9割が間違っているのです。思ったような効果が出ないのは、計算ミスより計算式そのものが間違っているのです。うすうす、あなたも気づいているのではないでしょうか?

 そこで前回に引き続き、「働き方改革」のセオリーにありがちな落とし穴と、それに代わる速くラクに成功するコツについて解説していきます。

トップのゴリ押し回避のため現場で考えさせると仕事が増える

 あなたの会社の働き方改革は、経営トップからのこと細かい指示の下に行われているでしょうか。いや、そういう企業は少ないでしょう。というのも、トップダウンになると、どうしても現場の思考停止を招いてしまいます。それを避けるため、トップは「大枠」だけ示し、働き方改革の意味合いについては現場で考えさせようとしているのではないでしょうか。その意図は痛いほどわかります。

 働き方改革だけではなく、何らかの全社的な取り組みが必要になった場合、トップはその大枠だけを示し、その意図を役員や管理職に翻訳させ、現場で実情に即した打ち手を考えさせようとする。これが一般的な企業の支持伝達の姿ではないでしょうか?

 しかし、ここに罠があります。これは間違いなく現場の仕事量を増加させる手法なのです。

 こんなことを書くと、熱心な読者の方から「なんだ、前回とは正反対のことを言っているんじゃないか」という声が飛んできそうです。

 私は前回の記事で、「社長が本気でコミットすると、現場にプレッシャーがかかり、今までの仕事に加えて、『業務効率化のための仕事』が加わってしまうので、結果的に働き方改革は失敗する」と解説しました。

 もちろんそれは間違いではありません。そして、「働き方改革を現場任せにすると失敗する」というのもまた事実なのです。

 順を追って説明しましょう。

「あうんの呼吸」が求められてきた日本企業では、上層部の言動は部下に対して大きな影響力を持っています。上司からの指示ばかりか、些細な問いかけでさえ、新たな仕事を発生させてしまうのです。ここが見落とされがちなポイントなのです。

 仮に役員が部下にザックリした指示しか伝えなかったらどうなるでしょうか? 部長、課長といった管理職は役員の意向をくみ取ったり、推し量ったりして仕事をします。これが、管理職以下、全社員にも波及し、必ず「上司の顔を潰さないように」と気を使うようになり、「ムリ・ムダ仕事」が際限なく増殖してしまうのです。言わば「忖度仕事」の発生です。