現代の日本には、社会が抱える課題の克服に使命感を持ち、その実現のためにイノベーティブな取組みを行う人々がいる。ソーシャルアントレプレナーと称すべき人々である。
10年余にわたって「1次産業を、かっこよくて感動があって稼げる3K産業にする」活動に邁進してきたみやじ豚(神奈川県藤沢市)代表取締役の宮治勇輔氏(39)は、さしずめその代表格のひとりであろう。様々なメディアに取り上げられ広く知られる宮治氏であるが、氏の赤裸々な思いを3回に分けて詳述したい。
農家を継いだこせがれに“武器”を渡す
宮治氏は神奈川県藤沢市で養豚業を営む家に生まれ、慶応義塾大学卒業後、サラリーマン生活を経て家業を承継。実家の豚肉を、全国でも稀有な(地域名でなく)個人名を冠した「みやじ豚」としてブランド化することに成功した。
その一方で、かつて自分自身がそうであったように「もう農業じゃ食えねえから東京に出て働け」と父親から言われて育った“農家のこせがれ”が日本各地にいるのではないかと考え、農業の魅力と可能性を伝え農家になる支援を開始する。NPO法人「農家のこせがれネットワーク」の活動である。