トランプ大統領は、大海軍の再構築は「アメリカにおいて、アメリカの労働者により、アメリカの鉄で、大量の軍艦を建設しなければならない」と主張している。たしかに、軍艦の建造はいわゆる重厚長大産業から最先端ITテクノロジーまで裾野の広い多種多様の企業を総動員する必要がある。海軍の増強は、海軍戦略、そして国防政策の側面だけでなく、各種技術レベルの底上げ、雇用の確保、結果的に税収の増進といった経済活性策という側面があることも見逃せない。

「SHIP法」成立には政治的側面も

 今回法律化された「SHIP法」は、アメリカ海軍当局の主張のとおり「355隻海軍の建設を達成しなければいけない」という趣旨の法律である。「艦艇数の増強を図る努力をすべき」といった具合に、単に目標を提示した法律ではなく、「アメリカ海軍の主要戦闘艦艇数を「355隻以上にする」と、具体的に海軍艦艇の規模を規定したのだ。

 軍艦という高額兵器の大増強を図るという法律の執行には、もちろん莫大な予算を投入しなければならない。連邦議会予算事務局などの算定によると、トランプ大統領の目指す大海軍を建設するには毎年210億ドルの軍艦建造費が30年間にわたって必要とされている。

 今回「SHIP法」が成立したのは、アメリカの国防が強化されるという軍事的理由もあるが、それ以上に連邦議員、とりわけ州益の代表である上院議員が選出州の雇用の拡大を目指して議会を通過させたという政治的側面も見逃せない。