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(文:中島真志)

 2009年に発行が始まった、インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」。当初は1BTC(ビットコインの単位)が1ドルを切るほどだったのが、その後価格は急上昇し、現在は、1BTCが1万ドルを超えるほどの高値となっている。価格は、この1年で10倍、2年前に比べて25倍という急上昇ぶりだ。

アフター・ビットコイン』(中島真志著、新潮社)

 当然、ビットコインは投資の対象として熱い注目を集めているわけだが、「ビットコインはやがて崩壊するが、その基幹技術であるブロックチェーンはこれから伸びる」と予測するのが、新著『アフター・ビットコイン 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者』を刊行した中島真志氏だ。

 中島氏は1958年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、日本銀行に入行。調査統計局、金融研究所、国際局、金融機構局、国際決済銀行(BIS)を経て、現在は麗澤大学経済学部教授を務める。

 中島氏に、ビットコインやブロックチェーンの最新の状況について話を聞いた。

バーナンキ元FRB議長の発言が後押し

 私がこの本をなぜ書こうと思ったか。それは、毎年出席している、金融関係のある国際会議がきっかけでした。

 2013年から14年にかけて、その国際会議で最大のテーマとなったのがビットコインでした。出席者の誰もが話題にしている。ビットコインは国境を超えて行き来する新しい仮想通貨だ、これは銀行にとってはゆゆしき事態だ、と銀行関係者は皆考えていたようです。

 ところが、2015年の会議に出席してみると、突然「ビットコイン」という言葉を一切聞かなくなった。入れ替わるように登場し、飛び交っていたのが「ブロックチェーンはすごい」「この技術は本物だ」といった言葉でした。不思議に思って出席している銀行関係の人たちに聞くと「ビットコインはもう終わったよ」「あんなものは使えない」と口々に言うのです。

 当時、日本では「ビットコインは値上がりする」「1億円儲けた」などと、「投資商品」としての側面がクローズアップされていました。ところが海外では「終わった」と言われている。この“内外格差”は何なのだろう。

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