過去四半世紀の経験によると、北朝鮮と外交交渉をしても単に北朝鮮側に時間を与えるだけの結果となりかねない。そこでアメリカ外交当局は、中国を引き入れて、中国の影響力を担保として北朝鮮にICBM開発を中止あるいは凍結させようと考えている。しかしながら、北朝鮮軍と中国軍の裏の関係ははなはだ不鮮明であるうえ、中国が北朝鮮問題を外交カードとして用いながら、南シナ海ならびに東シナ海への膨張主義的進出を加速させているのが現状だ。トランプ政権が、これ以上中国に北朝鮮ICBM開発問題への関与を期待すると、東アジアでのアメリカの影響力はますます低下してしまうことになる。

 したがってアメリカにとっては、中国の影響力を当てにせずに、アメリカが主導して北朝鮮による対米核攻撃能力を摘み取る方策、すなわち北朝鮮に対する「予防戦争」の発動しかない、ということになる。

 とはいっても、軍事オプション発動には、アメリカ軍当局は極めて慎重にならざるを得ない、というのが現状である。

「徹底的予防戦争」のハードルは高い

 アメリカが北朝鮮に対する先制攻撃、すなわち「予防戦争」を実施する目的は、アメリカ領域内を核攻撃可能なICBMならびにそれを発射する地上移動式発射装置(TEL)を完全に葬り去ることにある。

 したがって、アメリカ軍による先制攻撃は、北朝鮮軍のICBMとその発射関連装置の格納位置(山間部の洞窟や地下式施設)が判明した場合に限られることになる。つまり、ICBMとその発射関連装置を完全に破壊することが可能な確証を手にするまでは、「予防戦争」が発動されることはない。

 場合によっては北朝鮮のICBM関連施設のみならず金正恩政権首脳を一網打尽に排除してしまい、ミサイル開発能力と核開発能力を一掃してしまう、といった「徹底的予防戦争」も取り沙汰されてはいる。しかし、国防当局の戦闘態勢準備や政府首脳、そして連邦議会などの論調といった現状からは、とてもそのような軍事作戦を実施することはできない。最大の理由は、「徹底的予防戦争」を実施するには、どうしても地上軍を北朝鮮領内に送り込まなければならないからである。