「眠いけれど食べたい体」で起きているホルモン変化

睡眠不足と食欲の関係を探る(後篇)

2017.11.17(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
睡眠不足時には体内のホルモン分泌に変化が見られ、それが食欲を増進している可能性がある。

 睡眠不足のとき、やけに食欲が増すように感じられるのはどうしてか。このテーマで専門家に話を聞いている。

 応じてくれたのは、埼玉県立大学准教授保健医療福祉学部で睡眠学などを専攻する有竹清夏(ありたけ・さやか)氏。「短時間睡眠のエネルギー消費、深部体温、食欲に与える影響」といった研究テーマで人間を対象とする実験を行い、早稲田大学の内田直(うちだ・すなお)教授(4月に定年退職)、花王の日比壮信(ひび・まさのぶ)主任研究員らと2017年1月に論文を発表した。

 前篇では、睡眠不足になると食欲が増すなどの関係性が、世界の各研究で認められてきたことを確かめた。それとともに、有竹氏らが発表した研究成果の一部を聞いた。7時間睡眠と3.5時間睡眠では、被験者のエネルギー消費全体の量で有意差は見られなかったという。つまり「短時間睡眠者は起きている分、エネルギーがより多く消費されるため食欲が増す」という論は成り立たないことになる。

 では、睡眠不足の人の体には、どんなことが起きているのだろうか。引き続き、有竹氏に話を聞いた。

睡眠不足で食欲抑制ホルモンPYYが減少

――前篇では、9人の若い健康な男性を被験者とし、3日にわたり7時間睡眠または3.5時間睡眠を続けたうえで、エネルギー消費、深部体温、そして食欲などの違いを測定したと聞きました。3日目19:00から代謝測定を始め、回復睡眠を含む翌日まで計48時間を測定対象としたところ、エネルギー消費量全体については有意差がなかったということでしたね。

 一方で「あるホルモンの分泌量に7時間睡眠者と3.5時間睡眠者で有意差が見られた」とのことでした。これはどんなホルモンですか?

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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