私のような人種は年末年始もあまり関係ない日々を送っているのだけれども、やはり年の瀬、このコラムも2010年はこれが最後ということになるわけで、今回はこの1年を振り返りつつ、自動車産業を核にした日本の「技術立国」が直面している「今」を見わたしつつ考えてみたい。
前にも指摘したように、とりわけ自動車産業に関わる分野でこの国を覆う「ガラパゴス化」はかなり深刻な状況に立ち至りつつある。クルマ市場そのものにしても、11月末の時点で総販売台数約470万台の中で、外国企業のクルマは約16万4000台、シェア3.5%にすぎない。
中国ではクルマ購入者の10人に1人が「ゴルフ」の資質を体験
輸入車のマーケットリーダーはフォルクスワーゲン(VW)の約4万3500台である。そのおおよそ半数が「ゴルフ」だとして、今日、実用品としての乗用車の世界的ベンチマーク(優れた製品という意味での評価基準)だと、私(および私の周辺でクルマをよく知る人々)が実感しているゴルフ、特に1.2リッター過給エンジンを積むベースグレードのトレンドラインを購入し、その資質を体験し、体感しているのは概算2万人にすぎない。その家族、友人などまで範囲を広げても年間数万人にとどまるわけだ。
アウディも加えたVWグループとしての販売台数(2010年1~11月)を見ても、日本国内では5万9000台を少し下回る、という数字である。
市場のガラパゴス化を示す1つの指標として、他の仕向け地・地域におけるVWグループの同じく2010年1~11月の販売データを確かめてみると、お膝元の西ヨーロッパで約171万台と多いのは当然として、ロシアを含む中・東欧圏で38万2900台、米国で32万5600台、そして市場規模の拡大急な中国ではこの11カ月間だけで実に182万台が顧客の手に渡った、という。
中国の自動車販売は通年で1000万台を超えようという状況だが、その中での市場シェアは2割に近づき、中国でクルマを購入し、生活する人々の10人に1人程度はゴルフの資質を「当然のもの」として体験してゆく。それが毎年100万人ずつ、クルマ生活体験という意味では、その数倍ずつ増えてゆく、という状況が生まれているのだ。
ちなみに、シェア1位をVWグループと争っているのはGM(ゼネラル・モーターズ)であり、こちらも年間販売台数200万台を超えることが確実に見えている。この2グループは、中国が合弁(合作)による現地生産を要求したその初期から参入してきたという経緯も見逃せない。
これに対してトヨタ自動車は11カ月で72万6500台、通年で80万台いけるかどうか。日産自動車は通年で85万台、ホンダは70万台を超えるあたりと、日本メーカーは中国ではメジャープレーヤーとは言い難い状況である。