「大企業信仰」は日本社会の深いところに根を下ろしているし、不況になればなるほど、それは濃くなってもいくようだ。

 文部科学省が公表した10月1日時点での2011年大学卒の就職内定率は57.6%と、1996年に調査を開始して以来、過去最悪の数字となっている。

 ただし、求職者1人に対してどのくらいの求人があるかを示す「有効求人倍率」は、従業員5000人以上の大企業では0.47倍(リクルート調べ)だが、300人以下の中小企業では4.41倍(アイタンクジャパン調べ)だという。

 つまり大企業への就職は厳しい状況だが、中小企業では1人の求職者に対して4社以上がラブコールを送っているというわけだ。超氷河期どころか、まったくの「売り手市場」なのである。

 しかし、中小企業への就職希望者は増えない。狭き門の大企業にばかり希望者が殺到し、なおさら門は狭くなり、「内定がもらえない」と学生は悲鳴を上げ、マスコミは超氷河期と騒いでいるのだ。

中小企業の人気のなさは親の影響?

 12月12日には東京ビッグサイトを会場に、中小企業の合同就職説明会が開かれた。ただの説明会ではなく、参加者が希望すれば、そのまま選考試験まで受けられるという至れり尽くせりのイベントだった。

 にもかかわらず、ブースを設けた中小企業は110社もあったというのに、参加した学生は1900人余りでしかなかった。中小企業の人気のなさを象徴する結果になってしまったのだ。

 「中小企業軽視」の背景には、親の存在も大きい。中小企業から内定をもらったものの親に反対されて断った、という事例を口にする大学の就職担当者は少なくない。そもそも親が賛成しないので、中小企業の採用試験そのものを受けない学生も多いという。

 中小企業の求人倍率だけが上昇するはずである。自分の将来を親に相談しなければ決められない学生もどうかと思うが、そこまで口出しする親にも首を傾げないわけにはいかない。

 親の「中小企業軽視」、裏を返せば大企業信仰が子に影響し、超氷河期に拍車をかけているというわけだ。

「給与」と「安定」を求めて大企業へ

 なぜ、そこまで大企業信仰が根深いものになってしまったのだろうか。