大学・短大が専門職大学・短大へと移行することはあり得るのだろうか。

 前回の記事「専門職大学へ転換する専門学校はどれだけあるのか?」では、専門職大学という新制度が今後どうなっていくのかを探るため、既存の専門学校のうち、いったいどれだけの学校が専門職大学・短大への転換を目指すのかについて考えてみた。結論だけ言えば、その数は、きわめて限定されるのではないかというものである。

 そこで今回は、では、既存の大学・短大の中からは、専門職大学・短大への移行を目指す動きが出てくるのかどうかについて見てみたい。

専門学校の設置基準が緩やかな理由

 本題に入る前に、一点だけ、前回の記事の補足をしておきたい。

 前回、既存の専門学校の中から専門職大学への転換を目指す学校は、実際にはごく少数にとどまるだろうと推測した根拠として、専門学校の設置基準が、大学の設置基準と比較すると、かなり緩いということに触れた。それゆえ、既存の専門学校が専門職大学への転換を果たすためには、施設設備やスタッフなどの面で新たな負担を抱え込むことになる。そのことが、無視しえない“参入障壁”となるだろうと判断したわけである。

 今回、補足的に述べておきたいと思ったのは、上記の趣旨を変えるわけではないが、専門学校の設置基準が緩やかであるという制度設計の意味について、誤解を与えることは避けたいと考えたからである。

 結論だけ言えば、大学と比較して専門学校の設置基準が厳しくないのは、それが“亜流”の学校制度だからとか、正系の学校よりは一段“下”だからということでは断じてない。そうではなくて、緩やかな設置基準の学校制度であるがゆえに、社会の変化に機敏に対応することができ、職業分野の変転を踏まえて、産業界のニーズにも柔軟に応えることができるからである。これが、専門学校のそもそもの制度設計の原理なのである。