コミュニケーション手段をコントロールした者が権力を握る――。
この言葉が真理であるかどうかは分からない。しかし、少なくとも納得させられる表現ではある。
米ジョン・F・ケネディ政権でスピーチライターを務め、後年歴史家として名を馳せたアーサー・シュレジンジャー氏の言葉である。
従来型のメディアだけでなく、SNSを含めた最近のコミュニケーション手段の世界的な影響力を眺めると、十分に説得力がある。
「迅速に動いて物を壊せ!」
前置きが長くなった。今年5月、米国で『迅速に動いて物を壊せ(Move Fast and Break Things)』という書籍が出版された。タイトルの「迅速に・・・」はフェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグ氏が社訓として社内の壁に貼っているフレーズである。
ただザッカーバーグ氏本人の言葉ではなく、サイエンスの世界では以前からよく使われている表現である。
このタイトルだけを聞くと、フェイスブックの新たな成功物語の本に思われるが、全くの逆である。副題に「フェイスブック、グーグル、アマゾンは文化を追い詰め、民主主義を弱体化させた」という言葉がついている。
著者のジョナサン・タプリン氏は3大ウエブサイトが世界のコミュニケーション手段を独占しているせいで、民主主義がいま危機に瀕していると説く。
5月の刊行以来、米国で議論が起きている。同氏は南カリフォルニア大学アネンバーグ・イノベーション研究所の名誉所長。結論として、3大企業は分割されるべきという議論を展開する。