ミツバチの意思決定の仕方には、我々も見習うべきところがある。

 みなさんの会社では、「声の大きい人の勝ち」という会議はないだろうか。1人演説を長々と続け、他の人が異論を差し挟もうものなら「いや、それはね」と発言を遮ったり、「君は全然分かってない」と罵倒したり。みんな嫌気がさすまで頑張って、ついに押しきるという人。

 昨今は「民主主義の限界」という言葉もよく聞こえてくる。他方、「強いリーダー」待望論も聞こえてくる。悪弊を刷新し改革を成功させるには、民主主義ではいつまでも決まらず、強いリーダーに一任した方がよい、というわけだ。

 しかしまあ、ご多分にもれず、「声の大きい人」の意見が正しいとは限らない。おかしなところも一杯あるというのが、むしろ普通。会議の参加者みんなが「言ってること、おかしいよ」と思ってる。けども、他方、「論破しようとしたらやたらと噛みつかれるし、変な論理で頑張るし、何より大きな声でともかく黙らせようとする。面倒くさい」ともみんなが思っている。押し切られている感じだ。

 しかしここで、面白い方法がある。声の大きい人を静かにさせ、会議に参加する全員の知恵をすくい上げ、しかも全員一致で意見がまとまることが多くなるという会議の方法がある。それが「ミツバチの会議」だ。

ミツバチの命がけの会議

ミツバチの会議:なぜ常に最良の意思決定ができるのか』(築地書館)の著者、トーマス・D. シーリーは、ミツバチから会議の仕方を学び、大学の教授会という、これまた一癖も二癖もあるような教授たちの会議で、声の大きい人を静かにさせ、全員の知恵を吸い上げる画期的な運営を可能にしている。

 この本では、ミツバチの「分蜂」という現象を紹介している。新しい巣に群れごと引っ越しするこの大事業は、巣の場所を誤ると群れ全体が死に絶えるという命がけの選択。この死生を決する判断を、ミツバチは極めて民主主義的に決めるという。

 ミツバチは、良さそうな営巣地の候補を見つけたら、「あっちに良さそうな場所があるよ」とダンスで巣のみんなに教える。そのダンスを見た別のミツバチは「どれどれ」と見に行き、「ほんとだ、いいね」とダンスを踊る。とてもよい場所なら熱心に、そうでもない場所ならほどほどで踊るのをやめてしまう。これを繰り返すと、素晴らしい候補地を推薦するハチの数が増えていく。