米国議会が日本の憲法第9条を日米共同防衛への障害と見なし、改憲を望むようになった――。

 この現実は日本の護憲派にはショックであろう。だが、米国議会上下両院の一般的な認識として、日本側の憲法9条の現行解釈による集団的自衛権の行使禁止は、「より緊密な日米共同防衛には障害となる」というのである。

 日本の憲法を改正するか否かはあくまで日本独自の判断によるというのが正論である。だが、日本の防衛が米国という同盟パートナーに大幅に依存し、しかも日本の憲法がかつて米国側により起草されたという事実を見れば、どうしても米国の意向が重視されてきた側面は否めない。

 つまり、日本で改憲を考えるに当たっては、米国が改憲に賛成なのか、反対なのかが、どうしても大きなカギとなってきたのである。

憲法9条の制約を指摘する超党派の議会の報告書

 日本ではこのところ日米同盟の重要性が再認識されるようになった。中国の尖閣諸島海域への強引な侵入と、それに伴う理不尽な日本への威嚇が、米国との防衛協力の価値を改めて意識させたからだと言えよう。

 だが、その日米の防衛協力や共同防衛では、日本の憲法から生じる制約がいつも浮上する。米国は日本を支援するために軍事力を行使する構えだが、日本側は米国への支援はもとより、日本自身のためであっても、日本の本土や領海を一歩出れば軍事力は一切使えない。憲法9条に違反するとされるからだ。この点が日米同盟の固有の片務性である。

 だが、米国側でも日本の憲法のあり方には多様な意見が存在してきた。米国が日本を占領した時期に起草した日本国憲法は、本来、日本を二度と軍事強国にしないことが主眼だった。だから日本が軍事力や戦力を永遠に持てないようにするという特徴があった。だが、その後、朝鮮戦争の勃発で米側に日本の武装を求める動きが高まった。

 それでもなおその後の長い年月、「日本が改憲して軍事面での規制をなくせば、また軍事大国の道を進む」というような、日本の左翼の主張にも似た護憲論が米側でも有力だった。

 だが、そうした米国の認識が変わってきたのだ。

 その変化の集約は、米国の議会調査局が2010年10月に作成した日米関係についての報告「日米関係=米国議会にとっての諸課題」の記述に見ることができる。

 議会調査局とは、連邦議会上下両院議員たちが審議する際に情報や資料を提供する調査研究機関であり、超党派のシンクタンクだと言える。