プランタン、ル・ボン・マルシェも日曜営業を開始

 パリ12区にあるル・ボン・マルシェは、1848年創業の世界最古の老舗百貨店である。同店舗も2016年11月25日に日曜営業に関する労使合意が成立し、2017年3月から日曜営業が実施された。

 同店舗の労使合意は、「日曜勤務は希望者のみ」「日曜勤務の賃金は2倍」「土曜勤務は通常の給与の25~75%増し」である。週末勤務に伴う振替休日はない。また、合意には、150人の採用も盛り込まれているという。

 一方、ラファイエットと同じオスマン通りにあるプランタンの店舗でも、2016年12月30日に労使合意が成立し、2017年6月から日曜営業を実施する。同店舗の労使合意は、「日曜勤務の賃金は2倍」「代休」「託児手当(60ユーロ)」の付与であったという。

マクロン新大統領が掲げる“柔軟性”

 日曜勤務の導入について、2017年2月にリクルートワークス研究所が行ったインタビューで、フランスのPwCアソシエイトのフレデリック・プチボン氏は、「日曜労働の広範な解禁は、フランスの労働法制の歴史的大転換だ」と語った。

 法案可決が困難を極めたにもかかわらず、最終的に国民のコンセンサスが得られたのはなぜか。プチボン氏は、「労使交渉で、報酬面での厚遇や代休の確保が約束されたこと」「従業員に対する日曜勤務のプレッシャーをいかに軽減できるか」など、各企業における交渉段階でさまざまな配慮がされたことにあるという。

 通称「マクロン法」は、エマニュエル・マクロン新大統領が経済・産業・デジタル大臣だった時に提案し、制定された法律である。マクロン大統領の政策のキーワードは「柔軟性」。労働者の育成をベースに、週35時間労働制の一部撤廃などの労働市場の柔軟化を掲げている。

 一方、2016年に改正された「労働・労使間対話の近代化・職業経歴の保障に関する法律(通称「エル・コムリ法」)」では、情報技術の発展による仕事とプライベートの境界の曖昧さを区別するための配慮として、業務時間外に仕事のメールを見ない「つながらない権利」を規定するなど、労働に対する従来の価値観は変わっていない。

 日本では、365日24時間営業の商業施設も少なくなく、利用者にとって非常に利便性が高い。しかし、その裏でサービスを提供する労働者がいる。歴史や宗教観、文化的背景などから、フランスと単純比較することはできないが、日本でも「日曜日に働く」ことの価値が問われるときが来るかも知れない。