山田朝夫氏が2010年から2015年まで「流しの公務員」として勤めた愛知県・常滑市役所(資料写真、出所:Wikipedia

 インパクトのある表紙だ。なにしろ「便器」である。男性トイレに設置されている、あの縦長の大きな便器だ。その便器を、ある男性が笑顔で掃除している。

 男性は何者か。本の帯には「霞が関を捨てたキャリア官僚」とある。トイレ掃除とキャリア官僚というギャップが気になり、思わず本書『流しの公務員の冒険 ―霞が関から現場への旅―』(時事通信社)を手に取った。

流しの公務員の冒険 ―霞が関から現場への旅―』(山田朝夫著、時事通信社)

35歳で霞が関を捨てる

 男性はやはりただ者ではなかった。読み終えて「この人はすごい」と恐れ入った。

 その男性は山田朝夫氏。「流しの公務員」である。流しの公務員とは山田氏の造語で、<各地を渡り歩き、求めに応じて、単身、地方行政の現場に飛び込み、関係者を巻き込み、その潜在力を引き出しながら、問題を解決していく「行政の職人」>を意味する。