<外から何かを持ち込んだり、自分がぐいぐい引っ張ったりするのではなく、地元の資源や人の技を磨き、地元の人が主役になるような仕事の進め方をしなければ、手がけたことは残りません。>
<常滑市民病院の再生プロジェクトでは、特に、私がいなくなった後のことを考えていました。>
常滑市民病院の建設・再生は言ってみれば「奇跡」である。だが、一度きりの奇跡で終わらせてはいけない。「大事なのは花を咲かせることではなく、根を育てること」なのだ。
こんな「役人」もいる!
自分がいなくなってからのことを考える上記のリーダーの心得は、カー用品チェーン「イエローハット」の創業者、鍵山秀三郎氏に教わったのだという。鍵山氏は、山田氏の“トイレ掃除の大師匠”である。本書では、山田氏とトイレ掃除の出会い、トイレ掃除の効果、トイレ掃除によっていかに山田氏が生まれ変わったかなども記されている。山田氏は、トイレ掃除が「人としてのあり方を変えてくれた」とまで言う。
本書を読み終えたときには「なぜ、よりによってこの写真が表紙なのか」という最初の疑問は消えていた。この写真こそが、山田氏の人となりや仕事哲学を端的に伝える一枚であった。
日本ではとかく「役人」の評判が悪い。しかし、中にはこんなにフットワークが軽く、現場力があり、成果を出している役人がいる。
表紙のインパクトにひるむことなく、また「元キャリア官僚」という取っつきにくい肩書きに惑わされずに、ぜひ読んでみてほしい。