日本の物価狂乱とは事情が異なる
今やデフレが社会問題化している日本だが、過去には幾度も物価狂乱を経験している。
1970年代前半の第1次オイルショックを引き金とした経済の混乱で、トイレットペーパーや洗剤などが店頭から姿を消したことはご存じの通りだ。地価急騰によるインフレの中で、消費者の不安心理が買い占め行動につながった。
しかし、中国における物価狂乱は性質が異なる。
中国政府はその主な要因を、天候による不作や、資源の国際価格の上昇によるものだとしている。また、米国の低金利政策を受けて新興国にマネーが流入したこと、土地や労働力、資本などの農村における生産資源の減少も要因だと指摘している。
確かに鉄鉱石、石油、大豆といった資源の国際価格は上昇している。海外の資源への依存度が高い中国においては、「輸入がもたらしたインフレ」との見方もある。
だが、上記の可能性よりも、むしろ「中国の市場経済に規範がないことが原因だ」と指摘する識者もいる。行き場をなくしたマネーが農産物に流れ込み、価格を吊り上げている、というのだ。
物価を煽る「炒」という行為
地元紙「東方早報」は11月11日、綿のパジャマが昨年の1.5倍の値段をつけたと報道した。その内容を要約すると以下の通りになる。
「9月2日から11月までに綿花価格は170%上がり、綿糸は150%、また綿布は30%も上昇した。その結果、上海でのTシャツの小売価格は100元から112.4元に上がった。
9月2日、1トン当たり1万8012元だった棉花価格は、11月10日には3万861元と170%も上昇した。原因は投機が発生して吊り上がったためだ。新疆ウイグル自治区は棉花の一大産地だが、その6~7割は投機筋によってコントロールされている」
つまり、人為的な操作だということになるのだが、中国ではそれを「炒(chao)」と表現している。
その先に浮かび上がるのが、浙江省温州の資産家「温州人」の存在だ。温州人が新疆で棉花を吊り上げているとの認識から、同自治区は10月12日「棉花市場安定のための緊急通知」を発表。綿花売買を行う企業への貸し付け審査を厳格化し、商業銀行が個人や自営業へ行う貸し付けも禁止した。