10月初め、人民銀行総裁の周小川氏が「年内は金利の引き上げを行わない」と発言しながらも、その数日後に利上げを発表したように、中国ではインフレへの懸念が強い。
中国国家統計局が11月11日に発表した10月の消費者物価指数は、前年同月比で4.4%の上昇という高い伸びとなった。
中でも食品が10.1%と高い伸びを示した。食品の中でも、野菜は31%、果物は17.7%も上昇した。農産品や食品など市民生活と密接に関わる分野が高騰している。
このところ上海の地元紙では毎日のように物価上昇が報じられる。「バイク便、値上げに」(11月9日付、『東方早報』以下同)、「トマト、1角で作って4元で売る」(11月9日)、「砂糖の価格が急騰」(11月10日)、「綿のパジャマは昨年の1.5倍」(11月11日)・・・。
その止まらない物価の上昇に、上海市民は目を白黒させている。主婦らの井戸端会議の話題は「物価速報」で持ちきりだ。
上海の物価は香港と東京を超えた?
食品価格の高騰で市民生活にも変化が表れた。
3人家族で上海に暮らすAさんは、従来、4種類のおかずを食卓に並べていたが、「最近は3種類に減らし、作る量も減らした」と言う。果物やお菓子など副食品も減らしている。
また、会社員のBさんは「貯金の額が減った」と打ち明ける。そして2人とも「上がらないのは給料だけだ」とため息をつく。
影響は台所のみではない。トマトの価格が上がったため、一部のレストランや学校給食から定番メニュー「蕃茄炒蛋(トマトとタマゴの炒めもの)」が消えた。筆者の贔屓にしている店の小籠包(ショウロンポー)も、ハーフサイズみたいに小さくなってしまった。
上海の物価がどれほど高くなったのか、最近、上海市民が好んで使いたがるフレーズがある。「上海の物価はもう香港を超えてしまった」――というのがそれだ。
上海のみならず、深センの物価も香港を超えた。住民はわざわざ香港のスーパーまで、食品や生活用品を買いに行くという。