イタリア・ローマのナヴォーナ広場。イタリアの生産性は日本よりもずっと高い

 人口が減少し、衰退していく日本社会に対して「皆で貧しくなればよい」と発言した上野千鶴子氏がネットで大炎上するという出来事があった。

 日本社会が貧しくなっているという現実は、徐々に社会的コンセンサスとなっているが、それでもフェミニストの口から出た、日本の前近代性に対する一種の皮肉めいた発言に批判が集中している状況を見ると、まだまだこの事実は受け入れ難いようである。

 筆者自身は、上野氏とは異なり、たとえ人口が減少しても経済成長は十分に可能との立場である。しかし上野氏が指摘するように、日本社会は半ば無意識的に貧しさを志向しているようにも見える。今回は、上野氏の発言をあえて建設的に捉え、経済成長とは何なのかあらためて考えてみたい。

人口が減ると経済成長はできないのか?

 上野氏は2月11日の中日新聞に掲載されたインタビューにおいて、衰退する日本社会について「みんな平等に緩やかに貧しくなっていけばいい」と発言した。上野氏は、人口減少を食い止めることは不可能であり、人口を増やすには移民を受け入れるしかないが、多文化共生に耐えられない日本社会で移民政策を実行するのは無理と主張。このまま貧しさを受け入れるしかないと結論付けている。

 炎上ポイントは「貧しくなればよい」という部分と「移民は無理」という部分の2つに分かれているようで、前者は主に世代間論争として若い世代から、後者については移民否定との文脈でとらえられ、本来なら上野氏の支持層であるはずのリベラル系の人たちから批判されている。