国際宇宙ステーションにドッキングしている「こうのとり」6号機。おなかの部分にバッテリーを搭載。(JAXA/NASA

 宇宙空間を15年以上飛び続ける人類の「宇宙の棲み処」、国際宇宙ステーション(International Space Station、略してISS)。そのISSが今や、日本の宇宙船なしには存続しえなくなっている事実をご存知だろうか?

 その名は「こうのとり(HTV)」。無人の貨物船であり、ISSに住む宇宙飛行士たちに食料、水などを届ける「宇宙生活の命綱」だ。現在、ISSへの物資輸送は米国2機、ロシア1機、そして「こうのとり」の4機が担っている。日本以外の貨物船は最近、たびたび失敗しており100%成功しているのは、日本だけ。

 さらに「こうのとり」しか運べない荷物がある。それが「バッテリー」。ISSで使われてきた旧型バッテリーが老朽化し、バッテリーの交換はISSを今後も使い続けるための最重要課題だった。その大役が、100%の成功率と世界最大の輸送能力を誇る「こうのとり」に任された。

 2016年12月に打ち上げられた「こうのとり」6号機は新型バッテリーを6台搭載。しかも、日本はただ宇宙に運ぶだけでなく、宇宙飛行士たちが交換作業を効率的に行えるように運搬台も改良、開発した。ISSで今年初めに行われたバッテリー交換は大成功! この日本の功績に対して、NASA幹部は「素晴らしい!」と大絶賛した。

 ところが。大役を果たした「こうのとり」6号機の帰り道、エクストラミッションとして行われた、「宇宙ゴミ除去実験」の半分(すべてではない)がうまくいかなかった。それが「宇宙ゴミ除去実験失敗」と大きく報道された。

 往々にして成功より失敗のほうが大きく伝えられる。今回も最後の「失敗」だけが独り歩きし、重要任務を果たしたにも関わらず、「こうのとり」ミッションすべてが失敗した印象を与えかねない報道も見られた。

 私は30年近く宇宙関係の取材を続けてきて、米ロの宇宙大国を必死に追いかけてきた日本が、今や対等となり頼られる立場になったことを誇らしく思う。それだけに、日本の方たちに「こうのとり」の大成功と、最後に行われた「宇宙ゴミ除去実験」のどこが失敗で、どんな点で成果が得られたかについて、正しく理解してほしいと願う。