今年9月7日に発生した海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件は、尖閣諸島・久場島沖西北12~15キロで起きたものである。

漁船による領海侵犯を取り締まる法律がない

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海上保安庁の巡視船「みずほ」〔AFPBB News

 久場島沖22キロまでは日本の領海だからこれは明白な領海侵犯事案と言えるのだが、日本ではそれを取り締まる法律がない。

 今回は漁業法違反の疑いで取り調べようとして追尾したところで衝突され、公務執行妨害で船長を逮捕したという。

 国際法(1982年国連海洋法条約)では、軍艦を除くあらゆる外国船に沿岸国領海内での無害通航権を認めている。

 しかし、その場合でも「沿岸国の平和、秩序または安全を害しないかぎり」との条件が付されており、沿岸国は無害でない通行を防止するためにその領海内で必要な措置を取ることができる、とされている。

 つまり、領海侵犯を防止するための法律を作ることは可能なのに日本ではそれをしていない、ということである。

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 さて中国・台湾は尖閣諸島を自国の領土と主張しているが、今回、この現場には日本の巡視船が存在するのみで、中国・台湾の官憲は何も存在しなかった。

 ということは、両国とも尖閣諸島における日本の実効支配(既成事実)を暗黙の内に認めていた、と言わざるを得ない。それは日本の巡視船が竹島や北方領土の、韓国・ロシアの主張する領海内に入らないことと同じである。

 しかして、こうしたことが何回か続いた後に、中国や台湾が武力を行使して尖閣諸島を奪取するかどうかが問題になる。

 既成事実(実効支配)を持つ国に対してそれを持たない国が武力攻撃をして領土を奪取することは、第三者的に見て明らかな侵略である。