マット安川 中国で民主化運動に精力を注いでいた評論家・石平さんが今回のゲスト。日本に帰化してから「誰よりも中国を知る男」としてご活躍です。
昨今の日中関係をはじめ、アジア情勢、今の日本政府の外交姿勢、メディアのあり方などについて、厳しくメスを入れていただきました。
党の権力者たちも学生も「反日」を道具に使っている
評論家。中国四川省生まれ、北京大学哲学科卒。1988年に来日し、神戸大学大学院終了後、民間研究機関に勤務。『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)刊行以来、日中問題・中国問題を中心に評論活動を続けている。2007年末、日本国籍に帰化。
(撮影・前田せいめい)
石 中国国内で反日デモが頻発しています。実のところそれらの内実は様々で、単純に「反日デモ」と一括りにできません。
まず16日に成都で起きたデモは、胡錦濤の後継者人事に絡む国内の権力闘争から発したものだと思います。
北京で5中全会(中国共産党中央委員会第5回全体会議)が開かれた、その翌日というタイミングですからね。
だいたい尖閣問題がターゲットなら、一番緊張が高まった時期に起こらず、事態が収束に向かっている頃に起きるというのはおかしいでしょう。
中国は昔から、国内の不平不満を抑えるために「反日」を活用してきました。自分たちで問題を解決できないものだから、外国を敵に仕立てて、国民の怒りをそっちに向けるというやり口です。
一部に反日感情があるのは事実ですが、日本はいわば道具として利用されているのです。
事実上、胡錦濤の後継者となった習近平は、今後、恐らく対日強硬姿勢を打ち出すと思うのですが、それも打算の結果です。
1つには強い指導者を演じるため。権力基盤を固め、名実ともに党の最高指導者となるためには軍の支持を取り付ける必要があり、それには反日をアピールするのが手っ取り早いのです。
似たことはデモを起こす学生たちについても言えます。政府公認のため、おおっぴらにできる反日デモを装って、こっそり反体制のスローガンを掲げていたりする。