【連載第4回】今、日本の農業は変わらなければならない。食料安保、食料自給率、農業保護などにおける農業政策の歪みにより日本農業は脆弱化し、世界での競争力を失った。本連載では、IT技術を駆使した「スマートアグリ」で世界2位の農産物輸出国にまで成長したオランダの農業モデルと日本の農業を照合しながら、日本がオランダ農業から何を学び、どのように変えていくべきかを大前研一氏が解説します。
「選択と集中」が産業としての農業を発展させる
危機感からの出発
世界第2位の農産物輸出額を誇るまでに成長を遂げた、現在のオランダ農業の出発点は、1986年のポルトガル、スペインのEC加盟でした(図-9)。
ECの形成により国境が事実上撤廃され、ポルトガルとスペインが加わると、葉物をはじめ安価な野菜がオランダ国内に流入し、農家は大きなダメージを受けました。危機感を抱いたオランダは農業の「自由化」「選択と集中」「イノベーション」を促進します。
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農業が経済省の管轄下に入った意味
まずは農地と生産品目の集約化を行い、大規模なハウス栽培を始めました。続いて、ワーへニンゲン大学 と近隣の研究機関でコミュニティを作り、研究施設と専門家の集中も始めます。そして、日本でいうJA全中に匹敵する公的機関であったDLVを民営化します。