EU「英国はなるべく速やかに離脱を」、未練断つ共同声明

仏北東部のドゥオモン納骨堂の外で行われた、第1次世界大戦中の「ベルダンの戦い」から100年を記念した式典に出席したアンゲラ・メルケル独首相(左)とフランソワ・オランド仏大統領(2016年5月29日撮影)〔AFPBB News

 英国のEU離脱という国民投票結果は現在進行形で大きな影響を各方面に及ぼし始めたところですが、その現象面に目を向けて、対症療法的な振る舞いだけに終始するのは愚かしいことです。

 日本の官邸も(またしても「リーマン」という言葉を使い、知己の欧州人大半が顔をしかめていました。何とかならんのでしょうか、この音痴ぶり)金融を中心にリスクに対処云々と言っています。

 確かに英国が揺れれば金融に影響が出る。でもその金融そのものが今回の出来事の根と深く関わっている可能性、国をどのように舵取りし、あるいは新しい世代の国民をどのように育てていく必要があるか、英国の事態は全く他人事でなく、人のふり見て日本のふりを直す賢慮が必須不可欠と思います。

 そもそも「国家の成り立ち」と「国民の構成」の間に生まれていた大きな歪みが、AIでは絶対に考えられない「非合理な主体」としての今回の投票や投票結果を生み出してしまった。

 その原点から振り返る必要があると思います。

ポスト産業社会? 英国の金融立国

 いまさら申すまでもなく、ロンドンはニューヨークと並んで世界最大の金融の中心、と言うより金融市場発生の地にほかなりません。

 同時に英国は産業革命の旗手でもあり、近代的な工業生産発祥の地でもあった。しかし現在の英国では両者の古典的なバランスは著しく失われていたと言わざるを得ません。

 1960年代以降、英国経済での製造業の比重は低下の一途をたどり、21世紀に入ってこの方、GDP(国内総生産)に占める製造業の割合は10%台にとどまっています。

 製造業に従事する人口もまた同様で10%台前半、逆に金融業は著しい伸びを見せてGDPに占める割合は10%を超えています。特にこの指標はリーマンショック前後で米国を抜いており、英国は世界1位の金融国家となっている。

 この値は、ドイツやフランスの金融業がGDPに占める割合、5%程度や日本の6%程度と比較してもほぼ2倍の規模という圧倒的な差で、派生商品などに寛容な英国はリーマン以降の金融の覇者であったと言うこともできるでしょう。

 さて、ここで突然ですが少し観点を変えてみましょう。

 AIの社会普及やIoT(もののインターネット)の展開で現在存在する職種の5割とも6割とも言われる割合が向こう10~20年で消えていくといった試算がいくつもなされています。

 それでは具体的に失われる職種、合理化され消えていく仕事にはどのようなものがあるでしょうか?