急須離れと世界進出が混ざり合う日本の緑茶

輸出国だった頃の繁栄を取り戻せ

2016.05.06(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要
静岡県川根本町の茶畑

 日本では、茶葉を急須で入れる緑茶「リーフ茶」を飲む人が減っているが、一方、海外では抹茶をはじめ、緑茶がブームになっているという。国内や海外における日本産の緑茶の状況を探ってみた。

ペットボトル普及で緑茶の「急須離れ」進む

 今年も新茶の季節がやってきた。国内一の茶の生産地である静岡県では、4月21日に新茶の初取引が行われた。熊本県や大分県で起こった地震の影響で、九州産のお茶の入荷は遅れているものの、今年のお茶の出来栄えは上々とのことだ。まもなく私たちも新茶のさわやかな風味を楽しむことができるだろう。

 とはいうものの、近年、ペットボトルや紙パック入りの「緑茶飲料」が普及し、若者を中心に急須離れが進んでいる。いまでは、「お茶は急須で入れるもの」という認識は大きく変化し、緑茶飲料の消費量は増加しているものの、緑茶のうち茶葉から入れるリーフ茶の消費が低迷しているのだ。

日本の食卓で減っている「急須で緑茶」の風景

 リーフ茶の低迷に伴い、茶の生産量も減少している。煎茶の原料になる荒茶は摘み取りの順番で「一番茶」「二番茶」「三番茶」とよばれる。新茶はその年の最初に育った新芽を摘んで作った一番茶のことだ。消費量の多い緑茶飲料の原料になるのは二番茶以降の茶葉を使った荒茶である。また、最近の消費者は、量販店で手ごろな製品を購入する。そのため、生産者にとって大きな収入源である一番茶の価格が低下し、打撃を受けている。

 一番茶が高く売れず、収入が減れば、生産者の意欲は減退するものだろう。生産者の高齢化などに伴い、茶畑が減少している。

 ただし、抹茶の原料となる「てん茶」の生産は増加している。てん茶は、よしずなどで茶畑をおおい、日光を避けて育てたもので、うまみが増し、苦味が抑えられた高級茶。てん茶を石うすでひき、粉にしたものが抹茶だ。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。


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