2016年米大統領選、「下品さ」特徴に

演説するドナルド・トランプ氏。米バージニア州リンチバーグのリバティ大学で(2016年1月18日撮影、資料写真)〔AFPBB News

「トランプは有権者への侮辱だ」

 大統領選への出馬を真剣に検討し始めたマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は予備選状況について、吐き捨てるように言い切る。だから俺が出なければ、という心境なのだろう。

 「大統領候補者たちの発言や議論のレベルがどうしようもないほど低い。有権者に対する侮辱だ」

 知人のフランス人米特派員などは、こう言って、苦笑する。

 「トランプに熱狂するアメリカ人の民度の低さにあきれ返っているよ。これほど低かったのかと最初は驚いたが、ここまで続くと、アメリカ人というのは元々この程度だったのかと、再認識せざるを得ないね」

 予備選の幕が切って下ろされてから2週間。遡ること数か月前から米共和党大統領候補のテレビ討論会は異例の高視聴率を上げている。政治番組としてではなく、新規に参入した新手のバラエティショーとして、だ。

 アイオワ州党員集会前日の共和党候補者テレビ討論会の視聴者は1247万人で1月25日から1週間のランキングではプロフットボール試合に次いで第2位。視聴率稼ぎの目玉商品にすらなっている。

それでもテレビ視聴率を稼げるトランプの暴言

 その理由は公職を狙う人物としては、あまりにも桁外れな言動を続ける不動産王。

 白髪交じりの金髪を極端に額におろした「すだれ頭」をトレードマークに暴言を吐き続けるドナルド・トランプ氏(68)という男の存在だ。

 立候補していなければ、誰もが言いたい放題のことを言う成り上がりもの程度にしか見ないだろう。少なくとも政治担当記者が追いかけるような人物ではない。

 不動産業と賭博、ゴルフ場経営で得た巨万の富を選挙資金につぎ込み、大統領選に名乗りを上げた当時は、皆「金持の道楽」程度にしか考えていなかった。

 ところが予備選前に始まった選挙キャンペーンでは、米社会の危機を訴え、「超大国アメリカへの回帰」を唱えるトランプ氏は、高い支持率を得て、他の追随を許さない。