システム開発を中国やインドなどの開発会社に委託する「オフショア開発」。IT業界ですっかり定着した開発手法である。だが、私は海外に流出したシステム開発を国内に取り戻し、地域活性化につなげられないかと考えている。
システム開発を国内の遠隔地に発注することを「ニアショア開発」と呼ぶ。ニアショア開発は2008年頃からIT業界で徐々に行われるようになってきた。しかし、地域の複数のソフト開発会社が力を合わせ、地域活性化につなげようという動きはまだ見られない。
ある大手システム開発会社が私の考えに賛同してくれ、一緒に活動を始めることになった。まずは、私の出身地である鹿児島県のソフトウエア会社、数十社に呼びかけてコンソーシアムを結成する予定だ。
地方で低下しているエンジニアの人月単価
日本のソフトウエア開発会社(特に地方の会社)の多くは、「中小企業緊急雇用安定助成金」の適用を受け、何とか生き長らえているというのが現状ではないだろうか。この助成金制度がなくなったらどうなるのか? 考えただけでもゾッとするという経営者は多いはずである。
先日、鹿児島でソフトウエア会社の社長をしている友人に会い、プログラマーの人月単価が35万円ぐらいまで下がってきているという話を聞いた。これは、中国の海岸沿いのソフト開発会社の受注金額(プロジェクトマネジャーからプログラマーまでの平均単価)とほぼ同一である。
情報処理推進機構(IPA)の『IT人材白書2010』によると、日本のシステム開発会社がオフショア開発で海外に発注した金額は年間で約1000億円とほぼ横ばいで推移している。この開発費用が地方に流れれば、どれだけ地域が活性化されることか。
オフショア開発が進んだ最大の理由は、日本国内の開発コストの高さであった。加えて国内で人材が不足しているという理由もある。
そうした事情もあって、オフショア開発事例の多くは大規模なシステム開発に関わるものだ。1001人月以上の大規模なシステム開発は、70%のプロジェクトでオフショア開発を活用している。一方、それ以下(300~1000人月以下)のプロジェクトになると、28.3%と大きくダウンする。