今から4年近く前の2012年2月。鹿児島県の港湾施設「マリンポートかごしま」を背に、地元の男性がこう案内してくれた。
「この港のすぐ近くに『ドン・キホーテ』が間もなく開店します。これから鹿児島もインバウンド消費で活性化することでしょう」
その口ぶりや表情から、県民待望の出店であることが伺われた。
「驚安の殿堂」というキャッチフレーズで知られるディスカウントストア、ドン・キホーテ(本社・東京都)が鹿児島県の港近くに出店する。その計画の背景には、大型クルーズ船で鹿児島を訪れる外国人観光客を呑みこもうとする戦略があった。
クルーズ船に乗ってやってくる訪日外国人の目的は、ズバリ「買い物」だ。特に中国人観光客は日本での買い物への期待が大きい。訪日外国人客のなかで中国人の消費額は群を抜く。飛行機ではなくクルーズ船でやって来るのは、重量制限なく買い物ができるためでもある。
そうした現状からすれば、クルーズ船で訪れる観光客をピンポイントでターゲットしたドン・キホーテの出店は極めて有効な戦略といえる。地元民も心を躍らせた。観光客、店舗、そして地元経済が潤うモデルを予感したからだ。