慰安婦問題はいまどうなっているのか――。
11月の日韓首脳会談で「日韓関係改善の最大の障害物」とされた慰安婦問題はその後、どうなったのか。この問題の背後で重要な役割を果たしてきた米国はどのように認識しているのか。私がふだん駐在する米国の首都ワシントンから見る限り、きわめて少しずつではあるが、慰安婦問題は日本側にとって有利な方向へ動き出している。
以下では、事態が好転していることの根拠を5点ほど報告したい。
歴史学者たちの抗議声明に反論
第1は、米国歴史学会(AHA)の機関誌『歴史展望』(Perspective on History)12月号に日本側の学者50人の反論が掲載されたことである。
『歴史展望』は今年3月号に、米国の歴史学者20人による「日本の歴史家に連帯して」と題する日本外務省への抗議声明を掲載していた。その抗議声明に対する反論である。
米国側の歴史学者を主導したのは、慰安婦問題で長年日本を糾弾してきたことで知られるコネティカット大学のアレクシス・ダデン教授だった。ダデン教授らは、米マグロウヒル社の高校教科書の慰安婦記述の間違いを正そうとした日本外務省を非難していた。