8月末、今年2度目の訪中を果たした金正日総書記。党代表者会も9月28日に開かれることが決まり、後継者問題に憶測が飛び交っている。

抗日の拠点と言えば白頭山

白頭山のケーブルカー白頭山頂上にある天池白頭山密営

 しかし、今回の訪中では首都・北京には赴かず、吉林省や黒龍江省といった中国東北地方への訪問に終始した。

 父であり北朝鮮の建国の祖である故・金日成主席の抗日運動ゆかりの地でもあることから、その訪問の意味もあったとの報道もあるが、抗日の拠点と言えば、北朝鮮政府から公式に金正日総書記生誕の地と発表されている「密営」もある白頭山が象徴的である。

 天池と呼ばれるカルデラ湖や頂上に向かうケーブルカーなどもあって、なかなか風光明媚な観光地と言える。

 しかし、革命の聖地として国民巡礼の地ともなっており、日本人が訪れたとしても、必ず北朝鮮側から付けられる観光ガイドによる抗日運動についての詳細な解説を聞かなければならないので、気持ちよく観光、というわけにはいかない。

 白頭山から流れ出る松花江は、吉林省や黒龍江省の広大な農地を潤している。そう言われてもなかなかどこなのか思い浮かべにくいが、旧満洲あたり、と言えば理解しやすいかもしれない。

 その中心都市ハルビンには、朝鮮民族抗日の地として象徴的なものがもう1つある。安重根が日本初代総理大臣にして韓国統監でもあった伊藤博文を暗殺したハルビン駅である。

 昨年、伊藤博文暗殺100周年式典が行われ多くの韓国・朝鮮人が訪れたというが、今は中国の一部、そして近年急速に経済発展を続け人口500万人にもなるこの大都市では、観光スポットにさえなっていない。

ハルビン駅前の雑踏。座り込んでいる人も多い

 それ以前に、とにかく人でごった返していて、とてもゆっくり見物といった気になれる場所でもないのである。

 中国の駅は、だだっ広く階段も多いというのに、一部の例外を除き、エスカレーターさえ完備されていない。長距離列車から降りたばかりで大荷物を抱える人たちであふれ返っているというのにだ。