ノーベル医学生理学賞、大村智氏ら3氏に 感染症の新治療法発見

ノーベル医学生理学賞の受賞が決まったことを受けて東京都内の北里大学で記者会見する大村智・北里大特別栄誉教授(2015年10月5日撮影)〔AFPBB News

 大村智さんのノーベル医学・生理学賞受賞の報を耳にして、最初に思ったのは「ファクト」の大切さ、人材育成で考えるなら「本物教育」の重要性です。

 本当の意味で「純日本産」のノーベル医学・生理学賞という意味では、大村さんのお仕事が明らかに最初のものと言うことができるかもしれません。

 また、世界が認める日本の価値は「ファクト」にあって「イリュージョン」にあるわけではない、という点からも、大村さんのお仕事と評価は多くを示唆しているようにも思います。

 そんなあたりを振り返ってみましょう。

丹念な仕事で「ファクトを発見」

 大村教授のノーベル賞受賞業績は「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療」を開発したことで、これによって全世界で10億人以上の人命が救われた「測り知れない貢献」であると賞賛されています。

 しかし、まず間違いなく言えることは、大村教授が必ずしも当初から「10億人以上の人を救おう」と思って、その研究に取り組まれたわけではないことです。もっと言えば「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療」をしようと思って仕事を始めたわけでも、たぶん、ない。

 大村さんは1970年代以降、日本国内の各地で土壌を採取、その土地土地に常在する特殊な微生物を分離、培養し、彼らが作り出す化学物質=抗生物質の中に、何か有用なものはないか、と丹念に「微生物と抗生物質のファクト=事実」を追っていかれた。

 その中で、たまたま静岡県伊東市近くのゴルフ場で採取した土壌から新種の「放線菌」を分離したところ、それらが生み出す抗生物質の中に、寄生虫の神経系などに作用して、彼らの成長や増殖を抑える働きがあることを見出した=ファクトに気がついた。

 こうした発見を、前史から少し振り返ってみたいと思います。