いわゆる「エコカー補助金」、正式には「環境対応車普及促進対策費補助金」が、当初設定してあった期限(9月末)まで3週間以上を残して打ち切りになった。「駆け込み」でクルマを購入する人々が増えて、5837億円の予算枠を使い切ったのである。
9月初めまでは、1日当たり2万~3万台、30億~40億円のペースだったのだが、9月4~5日の週末に購入された分を含む6日の申請受理台数は約9万6000台、補助金額は約116億円。ここで「エコカー補助金、今週にも打ち切りか」を伝えるニュースが飛び交い始める。翌7日には約6万6000台が「駆け込み」で購入・申請され、予算枠の残りが約10億円となった。
さらに、8日にも約5万2000台分、約74億円が申請され、ここで打ち切りとなったのである。経済産業省のホームページには、「既に公表しています通り、申請額が9月7日(火)までの補助金の予算残額(約10億円)を超過しているため、9月8日(水)に受理された申請は、公平を期すために、全て不交付とさせていただきますので、ご了承ください」という説明文が掲載されている。
かくして自動車の購入補助金施策は終了し、延長はされなかったので、「今後の新車販売の冷え込みが懸念される」といった自動車メーカー首脳の発言を伝えるニュース、同様のメディアやアナリストの論評を目にすることも少なくない。
「エコカー補助金&減税」の効果に疑問符がつく2つの理由
しかし、自動車とその社会のあり方を冷静に見渡せば、この措置そのものが、世界バブル崩壊直後の自動車産業へのカンフル剤、それもかなり荒っぽい劇薬だったのであって、ある程度の需要喚起が得られたら、そこですぐ止めるべきものだった。「エコカー減税」なる別の施策も同じように、その意味と効果には疑問符がつくと言わざるを得ない。
その理由は大きく2つある。
1つは明らかに「不公平」な施策であること。クルマを購入する可能性を持ち、いつ、どんな形で買おうかと考えている人々、そして消費刺激が生み出す需要増によって経営状況が改善されるはずの自動車産業全体、その両方において、国庫の資金、つまり税金が特定の一部分だけに注ぎ込まれる状況になってしまった。
そしてもう1つは、「環境影響の少ない車両をより速いペースで社会に導入する」という本来の目的がまったく「形だけ」のものであって、少なくともCO2排出量の削減、すなわちクルマ社会全体の燃料消費改善についてさえ、状況はほとんど改善されていない。
実はこの2点とも、最初からそうなると「見えて」いたことなのである。しかも現実にそのとおりの結果が明らかになってきている。
しかし、施策を立案し実施した行政側からの評価はまだなく、それ以前に一般のメディアはまったく言及していない。大まかな数字を整理するだけでもいろいろなことが簡単に見えてくるのに、メディアは表層を追うだけで、そこに踏み込むことはほとんどない。
だから実情にまったく気がついていないのだと思う。それならばここで、少し詳しく見てゆくことにしよう。
対象となる「環境性能に優れた自動車」とは
「エコカー補助金」は、元々、2009年4月10日から2010年3月末までの1年の間に新規登録された車両を対象に始められたが、2009年12月に「2010年9月30日まで」と1年半に延長された。
2009年度予算の1次補正と2次補正で設定された補助金総額が5837億円。1年半の期間で平均すれば、営業日1日当たり十数億円の金額となる。終盤の「駆け込み」がどれほどのペースだったかが、この数字からだけでもイメージできる。